核問題1(その3)
再処理問題
使用済み核燃料棒を破砕し化学的な処理をして、未だ分裂していないU235と生成たプルトニウムを回収し、核分裂生成物を分離する工程を再処理といいます。強い放射能のPuや放射能を持つ分裂生成物を取り扱うので、完全に自動化されています。第一の問題は燃料棒内に閉じ込められていた放射能物質は燃料棒が寸断破砕されるので外部に放出されます。特に気体状の放射性分裂は工場内から大気中に洩れないように密閉しなければなりません。しかし外界に洩れるのを防ぐフィルターが有効に働かない気体があります。
希ガスと言われるクリプトン85やトリチュウムH3などです。クリプトンは全部大気中に放出されます。例えば現在は稼動していませんが、核兵器用の米国のBarn-well再処理工場は年間14,000,000 Ci のクリプトンを大気中に放出していました。Ci という単位はラジウム1グラムの放射能で、1秒間に370億個の放射線(ラジウムではアルファ線)を出す量です。いまベクレル(Bq)単位が使われますが370億Bqにあたります.まさに想像を絶する量の放射能です。アメリカの子どもの乳歯を長期間分析した記録によると、年々急増していることが判っています。また北半球の空気試料中のクリプトン85は1955年から急増し1970年には約30倍になっています。世界規模の放射能汚染を引き起こしたのです。ちなみに原発も大気中へ希ガスを出しますが、再処理工場の出す量はその約5千倍にもなります。
ついで問題なのは工程は極めて複雑で、使用されているパイプの長さが数百キロメートルにもなるといいます。危険な化学工場です。一度故障が起きれば、人が立ち入れないために修復も困難です。それより最も懸念されるのは、分離されたプルトニウムは常に臨界量以下になるようにしなければなりません。もし装置の故障で集積するようなことになれば、核爆発さえ起こりかねません。工場が火災や爆発事故を起こせば、最強の放射能を持つプルトニウムや放射性物質が広範囲に撒き散らされ、人は住めなくなるでしょう。その被害は計り知れないものがあります。
商業用原子力発電では世界各国は安全性からも、さらに経済性からも問題を抱えた再処理をしない直接処分法を採用しているのです。ではなぜ日本は核兵器用になるプルトニウムを生産する再処理処分法を固執しているのでしょうか。1969年外務省「日本の外交政策の前提条件」の文書中に、つぎの文言があります。”わが国は、いかなる外国の圧力があろうとも、核兵器を開発する財政的、技術的手段はこれを保持し、必要とあれば進展させるよう勧告している。”
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