北朝鮮の核実験(2)
核実験は爆発力が0,5~3キロトン(地震波による推測)で長崎原爆の21キロトンに対して極めて小さいので、いろいろな論議を呼びました。1.世界最小のプルトニウム原爆を開発した。2.実験の失敗。3.爆薬のみ爆発させた。このなかの3は技術的にも有り得ないと思われます。前回失敗の可能性は少ないと書きましたが、実験は失敗したと言うのが可能性として高いと考えます。しかし核爆発は起きていたけれども完全な核分裂に至らなかったのではないか。一つにはプルトニウムの純度の問題です。プルトニウムを原子炉で生成するとき、プルトニウム239、240,241などの同位元素が生じます。240は自発核分裂を起こすので爆縮が十分進まないうちに核分裂します。数年前の文献を見直していたらロスアラモス研究所のロバート・セルデンによると、この場合でも最低1キロトンにはなるといいます。
また純度の悪い原子炉級ではグラムあたり自発的核分裂から出る中性子は毎秒360、兵器級では毎秒66個。爆縮過程で最悪のタイミングで中性子が入ってきた場合、初期モデルでは1~2キロトン、新型モデルではどんなタイミングで中性子が入ってきても威力は小さくならないことを1972年に発表しています。(ロスアラモス研、ガーウィン)
爆縮は中心のプルトニウムの周辺に配置された十数個の爆薬レンズに100万分の1秒の狂いもなく同時に点火しなければならない厳しい条件が課せられています。これらのことから今回の実験は完全な核爆発に至らなかったというのではないかと想えます。小型化に成功したのでないことは、当面ノドンへの搭載の虞はないことになりますが、この実験によって開発はさらに進むでしょう。
韓国国防研究院の辛成澤電力発電研究センター長(核工学博士)は「北朝鮮が140余回に上る高性能爆発実験をいままでに行ったことは、北朝鮮の核開発が初歩的水準を脱し、相当な水準に到達したことを物語っている。」というように、小型化原爆の完成は差し迫っているとみるべきでしょう。注:岡本良治氏に今回の実験について、新聞やその他の資料を提供して貰いました。感謝します。
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