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2006年10月12日 (木)

北朝鮮の核実験(2)

 核実験は爆発力が0,5~3キロトン(地震波による推測)で長崎原爆の21キロトンに対して極めて小さいので、いろいろな論議を呼びました。1.世界最小のプルトニウム原爆を開発した。2.実験の失敗。3.爆薬のみ爆発させた。このなかの3は技術的にも有り得ないと思われます。前回失敗の可能性は少ないと書きましたが、実験は失敗したと言うのが可能性として高いと考えます。しかし核爆発は起きていたけれども完全な核分裂に至らなかったのではないか。一つにはプルトニウムの純度の問題です。プルトニウムを原子炉で生成するとき、プルトニウム239、240,241などの同位元素が生じます。240は自発核分裂を起こすので爆縮が十分進まないうちに核分裂します。数年前の文献を見直していたらロスアラモス研究所のロバート・セルデンによると、この場合でも最低1キロトンにはなるといいます。

また純度の悪い原子炉級ではグラムあたり自発的核分裂から出る中性子は毎秒360、兵器級では毎秒66個。爆縮過程で最悪のタイミングで中性子が入ってきた場合、初期モデルでは1~2キロトン、新型モデルではどんなタイミングで中性子が入ってきても威力は小さくならないことを1972年に発表しています。(ロスアラモス研、ガーウィン)

  爆縮は中心のプルトニウムの周辺に配置された十数個の爆薬レンズに100万分の1秒の狂いもなく同時に点火しなければならない厳しい条件が課せられています。これらのことから今回の実験は完全な核爆発に至らなかったというのではないかと想えます。小型化に成功したのでないことは、当面ノドンへの搭載の虞はないことになりますが、この実験によって開発はさらに進むでしょう。

韓国国防研究院の辛成澤電力発電研究センター長(核工学博士)は「北朝鮮が140余回に上る高性能爆発実験をいままでに行ったことは、北朝鮮の核開発が初歩的水準を脱し、相当な水準に到達したことを物語っている。」というように、小型化原爆の完成は差し迫っているとみるべきでしょう。注:岡本良治氏に今回の実験について、新聞やその他の資料を提供して貰いました。感謝します。

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2006年10月11日 (水)

北朝鮮の核実験

 体調がいまひとつのため「核々しかじか」は22日以来休んでいますが、核実験を行ったとなると書かなければと思います。専門家も含めて北朝鮮がプルトニウムを数十キロ~数トンは所有し、プルトニウム原爆を数個は作製したと推測している人が多くなっていました。しかしプルトニウム原爆は爆縮技術が難しく、かりに作製したとしてもミサイルで運搬できるような小型化のものはないだろう。しかも一回の実験も行わず原爆として完成したとは言えない。というのが大方の意見でした。アメリカの長崎型原爆もネバダの実験場で最初の核実験を行いました。その際も開発当事者は成功は5分5分だと考えていました。

  今回の北朝鮮の核実験をどのように見るのか、まだ情報が不足しているなかで言えることは、爆縮技術を持っていることが明らかになったことです。長崎の原爆はTNT火薬にして21キロトンに相当する爆発力でしたが、地震波の観測ではTNT

500~3000トンの爆発という。これを実験の失敗とみるのか、小型化に成功したと見るのか意見の分かれるところでしょうが、恐らくは不明のままになりそうです。(わたしは爆縮の構造から失敗とは思えない。)しかし後者であればミサイル・ノドンへの搭載という日本にとってはもっとも脅威的なことになります。ノドンの搭載重量は約1,2トン、今回の実験、さらに今後の実験によって小型軽量化に向け北朝鮮は総力を結集することでしょう。

  今回の実験が核拡散防止条約(NPT)の崩壊、ドミノ現象的な小国の核保有、テロ組織への核漏洩など国際てきな平和・安全を脅かす深刻な事態である事はいうまでもないことです。

しかしアメリカは8月30日23回目の未臨界実験を行っている。このように核保有国とくに米国がNPT条約の核廃棄への努力の約束を無視してきた。ならず者国家と敵視するブッシュの尻馬に乗って北朝鮮を敵視する一連の日本の益々右傾化する「戦争嗜好」政策。一方で核廃絶と軍事力によらぬ対話による紛争解決を目指す、49カ国からなる非同盟諸国の呼びかけに応じていません。

この実験をアメリカ一辺倒から、極東アジアの一員としての外交路線に切り替える契機にすべきだと思います。

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